● こんにちは、グレース・パートナーズの佐佐木由美子です。
日ごとに秋の深まりを感じますが、都内でも紅葉が見られるようになってきました。今年も残り2ヵ月足らず、時間が経つのは本当に早いものですね。
今回は、職場におけるハラスメントの予防と対応について考えていきたいと思います。
●都道府県労働局等へ寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は年々増加傾向にあり、2002年度時点では約6,600件でしたが、2016年度にはその10倍以上の約71,000件にまで達しています。
発生件数の増加とともに、ハラスメントは多様化していますが、本日はセクシュアルハラスメントと妊娠・出産等に関するハラスメントを取り上げて、その予防と対応を考えます。
●まず、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントは、それぞれ以下のとおり定義されています。
セクシュアルハラスメント・・・「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について、不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されること
妊娠・出産等に関するハラスメント・・・「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されること
具体的なハラスメントの例としては以下のようなものがあります。
■セクシュアルハラスメントとなりうる例
・男性上司が、「若い女の子に入れてもらったお茶はおいしいな」と言う。
・独身男性に対して、男性の同僚が「どうして結婚しないの?」としつこく聞く。
■妊娠・出産等に関するハラスメントとなりうる例
・上司に妊娠を報告したら、「いつでも辞めていいよ」と言われた。
・2人目を妊娠中の女性労働者に対し、同僚の女性たちが「また育休とるの?図々しい」とたびたび嫌みを言う。
・育児のための短時間勤務をしている労働者に、上司が「短時間勤務の人に大した仕事はさせられない」と雑務ばかりさせ、仕事への意欲が低下している。
上記の例をみると、自社でもこれらのハラスメントが起こり得ると認識される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
職場におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントを未然に防止するためには、普段から以下のような事項を社内に発信し、従業員を啓蒙することが必要です。
・妊娠・出産等についての知識や制度について理解しましょう。
・妊娠した従業員や育児休業等の制度を利用する従業員は、周囲との円滑なコミュニケーションを心掛け、自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持ちましょう。
・妊娠中・育児中の制度を利用しながら働いている従業員に対しては、業務の状況とともに、周囲とのコミュニケーションに関しても目配りするようにしましょう。
・特定の人に向けた言動でなくても、妊娠・出産や育児休業・介護休業制度の利用について否定的な発言をすることは、ハラスメントの発生の原因や背景になり得ますので、注意しましょう。
・「子どもが小さいうちは家にいた方がいいのではないか」など、自分の価値観を押し付けないようにしましょう。
・自分の行為がハラスメントになっていないか注意しましょう。
・周囲のメンバーに隠れたハラスメント行為がないかについても注意しましょう。
●実際にハラスメント行為を受けてしまった際の対処について、以下のような情報を事前に共有することで、ハラスメントの拡大や早期解決に有効です。
・ハラスメントは受け流しているだけでは状況は改善されません。「やめてください」「私はイヤです」と意思をはっきり伝えましょう。
・一人で悩まず、上司や人事担当、社内または社外相談窓口に相談しましょう。
・相談したことで会社から不利益な取扱いを受けることはありません。
ハラスメント行為に気付いたら見て見ぬふりをせず、相談窓口に通報するように促すことも大切です。
●会社は、職場におけるハラスメントを防止するために以下の措置を講じる義務があります。
・会社の方針の明確化及びその周知・啓発
・相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応(妊娠・出産等に関するハラスメントの場合)
・職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
・併せて講ずべき措置(プライバシーの保護、不利益取扱いをしないことなど)
●ハラスメントを受けた従業員は、仕事への意欲や自信を失い、さらに心の健康に悪影響を受け、休職や退職に至るケースもあります。
周囲の従業員たちは、ハラスメントの存在を見聞きすることで、仕事への意欲が低下し、職場全体に悪影響を及ぼすことが考えられます。
ハラスメントを行った従業員も、職場での信用を失うだけでなく、懲戒処分や訴訟のリスクを抱えることになります。
そして、ハラスメントを放置したとなれば、会社が責任を負うことになりかねません。
このように、ハラスメントが会社にもたらす損失は、想像以上に大きいものといえるのではないでしょうか。
日頃から職場でハラスメント問題を発生させないための対策を講じ、万が一発生してしまった場合の対応について確認しておくことは非常に有効です。
御社でもぜひこの機会にご一考いただければ幸いです。
それでは、ますます貴社が発展しますように!
人事労務コンサルタント/社会保険労務士佐佐木 由美子
※ この投稿内容は、厚生労働省「職場でのハラスメントの防止に向けて」の資料に基づいて作成しています。
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2017年11月21日